図書館削減白紙に 条例案を否決 北杜市
「これで図書館残る」「署名運動が効いたね」―。市長提案の条例が議場で否決されると、40席を埋めた傍聴者から小さな拍手と喜びの声があがりました。北杜市で合併前の町村ごとにある市立8図書館のうち五つを図書館ではない施設にする条例案を市議会(20人)は15日、圧倒的多数(18対1)の反対で否決しました。
市は、一昨年3月に「第三次総合計画」を決定し、その下支えとして「新・行政改革大綱」を策定、▽9校ある中学校を2~4校に▽15の保育所は8~10程度に▽温泉施設(10カ所)は民間譲渡か廃止へ▽総合支所の機能は縮小する―などを明記。「現在2体系の水道料金は統一」など20年前の合併(8町村)の際に合意が得られなかった課題も盛り込みました。
共感を広げて 署名運動が後押し
新・行革」具体化のトップバッターが「図書館の再編・統合計画」でした。「須玉、大泉、長坂の3館の図書館機能を充実させる」一方で、明野、高根、小淵沢、白州、武川の5図書館を「コミュニティ・コモンズ」(C・C)という名称に変え、「館内の一部を地域住民の居場所・交流の拠点施設に活用」「司書は常駐しない。新しい図書は購入せず、貸出もしない」という計画です。
「図書館が減らされてしまう」ことを知った市民からは「すてきな図書館が近くにあったから北杜市に転入してきた」「子どもたちと絵本を借りに行くのが楽しみ。無くさないで」「経費節約の標的が図書館とは。市長の考えはおかしい」などの声が次々とあがりました。
「北杜市図書館を考えるヤマネの会」(谷芙美子代表)は1カ月余の短期間で6400筆を超える署名を集めて市長に提出。議会での条例案否決を後押ししました。
会は、学習会や打ち合わせ会を重ねながら統合計画の問題点を知らせるチラシを3回発行。ラインも活用し「食堂に用紙を置いてもらえた」「保育所や申告会場前でたくさん集めた」などの経験を交流しました。署名の要望項目も「計画反対」だけでなく「拙速に進めず市民の意見を聞いて下さい」を加えたことに共感が広がりました。
採決直前まで
谷代表は「私自身、図書館ボランティアとして長く活動してきたので市の案は絶対ダメだと強く思いました」と昨年夏ごろを思い起こします。
「同じような立場や思いのみんなが動き出し、周りの人に声をかけ、会員は100人近くまで広がりました。手分けして地元の議員と繰り返し対話し、議会当日は70人が市役所前でボードを掲げて訴えるなど、採決の直前まで思いを伝えたことも力になったと思います」議会終了後も署名が集まり6536筆を集約しています。
日本共産党市議団(清水進、志村清)は、3館構想が示された当初から「計画の根底には国に求められた『公共施設管理計画』(北杜市は今後28年間で延床総面積を40%削減の目標)がある。市民、利用者の声も聞かずに結論ありきの進め方はおかしい」と主張しました。
住民サービスを削る一方で、40億円を積み立てて新庁舎建設を目指す「新・行革」方針を批判し、「市の財政が厳しいというが、毎年10億円を超える黒字で、基金は県内自治体でもトップクラス」と指摘してきました。
採決直前の討論(15日)では「市の図書貸し出し数(人口比)は全国上位で、子どもたちの読書習慣も県下有数だ。司書さんやボランティアの努力で培ってきた伝統ある8館は市の自慢。減らすべきではない」と訴え。他会派の市議からも反対意見が続きました。
最近のコメント