入試制度の弊害と高校生の貧困
甲府市革新懇(梅北和一代表世話人)が8月11日に開いた総会で、山梨県高等学校・障害児学校教職員組合の手塚正彦委員長が、入試制度の弊害や高校生の貧困について講演しました。その要旨を紹介します。
山梨県の高校入試制度が、小学区・総合選抜制から全県1学区制に変えられて7年になります。この7年で、県内の高校は、きれいに偏差値メジャーで1列に整列(ランキング)させられてしまいました。
具体的には、進学塾が主導する形で「何点ならこの学校」という進路指導(振り分け)がされ、成績の良い子は甲府市内の高校に集中しました。普通の子は少し遠い高校へ、成績のふるわない子はかなり遠い高校にしか行けない状況になってしまい、自宅近くの学校を素通りして1時間以上も電車に乗って通学する子が大勢生まれました。
私が勤務していた峡南地域の高校は、甲府地区からの生徒が8割近くを占めるようになり、県内有数の歴史を持つ高校がある峡東地域では、地元中学校の成績上位者40人ほどがそろって甲府市内に進学しました。
かつての、県内全域に特色のある高校が散らばってそびえていて、どの高校にも文武を問わず目標とされる生徒が大勢いた(「八ヶ岳型」と呼ばれた)状態から、一極集中(の「富士山型」)になって、有名大学をめざす成績上位生徒が甲府市の数校に集中する状況になりました。
「いい高校」でも、公表されないが問題は多く生まれています。一方、周辺の「置き去りにされた高校」では、生徒数が全体でも激減するなか募集人数が確保できず、歴史や伝統のある高校であっても統廃合の対象になってしまっています。
こうした高校からは▽不登校やいじめによる中途退学の率が高い▽高校レベルの授業についていけず、学習意欲も低い生徒が多い▽喫煙、万引き、リストカットなどの事例が多い▽家庭の経済状況が厳しい―などの共通した問題が報告されています。
とくに、親の世代の格差拡大と貧困は深刻で、「合格はできたが、制服を買うお金がない」「修学旅行の積み立てができない」などの相談は後を絶ちません。「皿洗いのバイトで月3~5万円を稼ぎ、家の食事代や、おばあちゃんの薬代を出している」と話してくれた男子高校生もいます。
心配なのは、こうした生徒たちが「どうせ自分なんか」と自己肯定感を持てずにいることです。すべての生徒が高校時代にいろんな仲間と触れ合い、将来への希望を持って過ごせるようにしていかなくてはなりません。
過度な競争をあおる今の高校入試制度は、修正すべきだと考えています。
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